ジエイタイで「人を動かす」ということは?2009-04-03

2019年9月5日

[日本海_NOTOブログより転載]

読売新聞の販売店にいたときにデール・カーネギーという人の「人を動かす(原題 : How to Win Friends and Influence People)」という本を最初に読みました。いわゆる「自己啓発本」です。でも書かれている内容を自分自身にあてはめて実践するとなると「ちょっと無理かな?」と感じました。私の場合は「管理者教育」といえるものを受けた経験はあることはありますが、受けた場所が陸上自衛隊の第3陸曹教育隊という下士官養成機関です。

誰でも気軽に受けれるものではないから特殊なケースかもしれませんね。もちろん一般の企業の中にいる現在では、自衛隊ではどうこうということは通用するはずがないので私の方から一般の人たちのやり方に口をはさむようなことはしません。でも私の場合はものを見る視点では自衛隊時代の感覚で見る場合がいまだにぬけないことも事実です。一般の人たちのものの見方に合わせるために消そうと努力しましたことも一時期ありましたが無理だったから(こういうときは教育って怖いと思います)、いまでは普通の人たちのものの見方はこうで、自衛隊ではこうで、と二重に見ることに慣れました。

人材派遣というアウトソーシング(外部委託)が一般的になってから企業の人材育成方法が変化したことは周知の事実です。人を育てるには時間も費用もかかるし、せっかく育ててもライバル企業にでも転職されたら・・・・?

それだったら人材派遣会社を利用して短期間(四半期ごと)に利益を上げた方が株主さんも喜びますね。今の一般の企業では大企業でも人材は自分で育てるものではなくて自動車や家電(カメラとかプリンターとか)みたいに他所から買ってきて使うもの。壊れれば買ったところに文句をいって替えてもらえばいいし、あきればまだ耐用年数が残っていても買い換えればいい、という感覚でしょうか。

自衛隊の場合は下士官以上になると「人を動かす」ということが重要な資質になります。一番下の3等陸曹でも1個班(10名前後)のリーダーです。上官から受けた命令をどうやって部下に伝えて遅滞なく確実に実行させるか(上命下達といいますね)、組織で行動しているときは常に考えますが、日本の下士官の場合はひとつの伝統的な方法があります。

「俺を見よ!俺に続け!」

と、とにかく自分が陣頭に立って先陣をきって突撃するスタイルです。言うのは簡単なんですが実際に習得しようとするとかなり大変です。下士官教育の流れでいくと、陸曹教育隊に入校する1ヶ月くらい前に「履修前(りしゅうぜん)教育」というものを2週間します。内容は大学受験予備校の入試直前になってやる冬季直前講習と「地獄の特訓」とよばれる企業研修を足した感じです。

2週間の履修前教育のあと陸曹教育隊で3ヶ月、後期専門職種教育で3ヶ月、ここまでが基礎です。部隊にもどってから毎月演習に行って経験を積むけれど、春夏秋冬のいろいろな天候や攻撃防御といった各種条件に応じた行動に慣れるまでにはやっぱり1年はかかります。でもそれだけやれば誰でもかなり自信をもって陸士に指示や命令を出せるようになりますよ。

部下になにか仕事をさせる場合は、まず最初は自分が完全に習得するところから始めるわけです。

当然スピードも早くて作業も正確確実できれいでかっこよく見えればもっといいわけです。相手が初心者の場合は、私のする方法をまねしてもらえれば早くてうまく出来るようになりますよ。という具合に教えながら仕事をさせると効率がいいからというのもあります。

いっしょに仕事をする人にとっても、そばに仕事をよく知っている人がいるのといないのとでは精神的な負担が違うと思います。でもうまくいかないときは大体が教え方が「上から目線」で気に入らないとか服装や態度という全身から受けるイメージがいやだ(性格が合わないともいいます)とか「本当にこの人知ってるの?」と疑われるような自信のない話し方だったりします。これについては自分自身で直していく必要があるので時間はかかりますがなんとかなります。

私は自衛隊を経験してきて「人を動かす」ということは「人に教える(育てる)」ということだと認識するようになりました。もっと極端な言い方をすれば「自分の色に染めてしまう」ということになりますか。

人それぞれ同じ仕事内容でも細かい部分では自分がやりやすいようにアレンジしているために微妙に違ったりします。隣の部署のAさんの仕事のやり方はこうだけど私はこっちの方がやりやすい、というのは普通にあります。それでは隣の部署のAさんの部下と私の部下とどちらが私の思っているように動いてくれるのかというと普通に考えれば私が教えて私のやり方を理解してくれている部下の方になります。部下という言葉を同じ職場の後輩に置き換えてもいいかもしれません。

教わる立場からするとこの人の教え方はうまいのかどうかを判断する方法はあると思います。話す口調がやさしいからうまいのかというとそうでもなかったりします。「上から目線」で命令口調だと今の若い人は逆切れしてどこへ飛んでいくか分かりません。

現在教える立場にある人でも知識や技能を自分のものにする過程で人によりますが相当な失敗を経験しています。自分が失敗したところというのは普通は初めて体験する人もこちらが何も言わなければまず確実に同じ場所で失敗してくれます。教える方とすれば「ああ、このままいけば失敗するな!」とその手前で事前に分かりますね。

ここで教える立場にある人がとる行動は3つあると私は考えています。

  1. 「人は失敗を繰り返すことによって成長するものだ」と考えている人は一度わざとそのまま失敗させます。それから注意します。
  2. 「失敗することを事前に防ぐために教育がある」と考えている人はこのまま行くと失敗するという場所の手前で注意します。
  3. 「私が失敗しながら覚えたことをすぐに出来るわけがない」と考えている人は失敗させて内心笑っています。

教えている教官の言動を注意して聞いていると教官の考え方が意外と分かるものです。実際の現場で働いていると、一度失敗しないと技能なんて見につかないと考えるのはかなり危険ですね。

失敗または事故ともいいますが、教えた人が失敗したときは怪我もしないで小さなうっかりミスですんだことでも教わった人がやったらその人の知識や作業状況によっては取り返しのつかない大事故になることもあるからです。そうなったら教えた人の信用問題にもなりますね。

自衛隊で訓練しているときは次のような光景が普通でした。

「ここはみんなが間違えるところだから」

「ここは失敗しやすいところだけどそばについているから思い切ってやってみていいよ。

やばくなる手前で私がストップかけるから」

それでいったん止めてから、そこから先はゆっくり続けていって、

教わる人に「そのまま進んだら失敗していたんですね」と理解してもらう。

次にやってもらったら・・・・頭では理解はしたけれどなかなかすぐにうまくできない。

そうしたらその手前で「このまま行ったら危険だぞ」と注意する。

こういうときはキツイ口調で注意しても聞いてくれるみたいです。

あとは習得してもらうまでは根気ですね。

「分かってますよ!いちいち言われなくも!今やってるところです><」

と泣きが入ってきたら、

「大丈夫だ、お前なら出きる」「あと少しだから頑張れ!」と励ます。

教えるこちらも根気がいります。そうやってうまくなってもらう。

一般企業の社員さんの派遣労働者にたいする接し方をみていて、正直最初はびっくりしました。自衛隊よりもすごいって^^ ありえない光景でした。教育訓練を全部派遣会社に任せるのもどうかな?と個人的に思います。新しい人が入ってきても教えることができない社員さんも増えているんじゃないでしょうか?

いつだったか?私がsonyで働く前に同じ長野県長野市にある新光電気というところにお世話になっていたことがありました。

入社前に日研総業の偉い人が直接長野市まで出向いてきて講義をしていったことがあります。

その人言ってました。私も最初はみなさんと同じ派遣社員で入ってきてここまで出世しました。出世するにはどうすればいいんですか?簡単なことですよ。自分の部下を育てるんです。部下を育てると周囲はこの人は面倒見がいいと見てくれて信用してくれる。不慣れな他の持ち場に異動しても育てた部下が支えてくれたりする。上司からはこの人はみんなをまとめる能力があると判断してくれる。そうすれば上司が動いてくれて上のポストに推薦してくれる。そんな感じの話でしたね。

人の動かし方を知っている人は普通に実践していると思います。

#人を動かす #日研総業 #新光電気